自然科学研究機構 核融合科学研究所 教授 宮澤様が研究されているヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例をご紹介します。核融合システム研究系では、核融合発電炉全体のシステム設計を進めるとともに、放射化しにくい材料や燃料の増殖・回収 に適した材料とそれらの適切な配置及びプラズマからの高熱流入にも耐えられるプラズマ対向機器の高度化を目的とし、それに向けた要素過程の研究を行っています。

プロフィール

大学共同利用機関法人

自然科学研究機構 核融合科学研究所

核融合システム研究系

炉システム設計研究部門

https://www.nifs.ac.jp/

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

教授 宮澤 順一 (みやざわ じゅんいち)
核融合科学研究所 教授。総合研究大学院大学 教授。
大型ヘリカル装置 (LHD) のプラズマ実験で得た知見をもとに、ヘリカル核融合炉の設計活動を率いる。専門分野の垣根を超えて、高温超伝導や核融合炉内機器、液体金属材料などに関する新奇なアイディアを次々に提案する。

川岸 孝輔(かわぎし こうすけ)
DMM.make 3Dプリント部門部長。メーカーで製品企画から外装設計、電子回路設計、コーディングとマルチエンジニアとして勤務し、数々の商品を世に送り出した経歴をもつ。3Dプリントを利用した設計製造に新たな可能性を感じDMMに入社しシニアエンジニアを務めた後にサービスデザインの統括責任者となる。

DMM.make 3Dプリント 筧 春輝(かけひ はるき)

筧 春輝(かけひ はるき)
DMM.make 3Dプリント事業部 チーフモデラー。 大学卒業後DMMに入社し、3Dプリントサービス発足初期よりメンバーとして携わる。 現在は3Dプリント技術のマルチエンジニアとして、各種3Dプリンターのオペレーションをはじめ、3Dプリントのコンサルティングや3Dデータ作成などの業務に従事。

3Dプリンターで造形したヘリカル型核融合炉の縮尺模型

筧:
本日、インタビューさせて頂きます、DMM.makeの筧と申します。

川岸:
同じく、川岸と申します。

宮澤様:
宜しくお願いします。

筧:
本日は、お時間を頂きましてありがとうございます。

川岸:
モノを見させて頂いて、日本での核融合研究に興味があるので、是非お伺い出来ればというふうに考えています。

宮澤様:
はい。

川岸:
是非、宜しくお願いします。

筧:
宜しくお願いします。進行は、私の方からさせて頂ければと思います。

宮澤様:
はい。お願いします。

— 核融合科学研究所とは、どのような事をされているかお聞かせください。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

宮澤様:
はい。核融合科学研究所というのは大学共同利用機関といいまして、各大学では個別に持ち得ないような大きな装置をみんなで使うための装置がここにありまして、それの管理をしている研究所になります。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

当研究所が持っているのは、大型ヘリカル装置と言いまして、実は、今のところ世界最大級の超伝導コイルで作った磁場で、高温プラズマを宙に浮かして閉じ込めておける装置なんですね。

なんでこんなモノがあるのかといいますと、核融合を起こすためには、核融合というのはそもそも重水素と三重水素という水素の同位体をくっつけて、ヘリウムに変えるんですけども。くっつける前と後では、質量が軽くなるんですよ。

アインシュタインの「E = mc2(イー・イコール・エム・シー じじょう、英: E equals m c squared)」という、質量に光速を2回掛けたものがエネルギーになるという事なんですけど。

とにかく、莫大なエネルギーが出るんですね。この核融合エネルギーを使って、太陽とか宇宙の星とかは燃えてるんですけども、それを地上で使えないかというのが、核融合の研究になります。

これを起こすためには、太陽とか星とかと同じようなモノで、プラズマを制御しないといけないんですね。プラズマというのも、聞いたことはあるけど、身近じゃないかもしれませんけど、要は高温のガスをプラズマといいます。水って、氷の状態から溶けて水になって、もっと温めると水蒸気になる、ここまでは学校で教わると思うんですけど。

この水蒸気を更に温めていくとどうなるかといいますと、H2Oが、まずHとOに分解します。更に温めていくと、OとかHが持っている電子を放出して、裸のH、裸のO、原子核と電子に別れます。この別れた状態をプラズマと言っていまして、このイオンが電子を取り付けたり離したりする時に、光が出るんですね。ですから、ガスとして光り始めます。

平たく言えば、光っているガスの事をプラズマと言うと、覚えて頂ければいいと思います。

ビームの剣とかビームの銃とか、宇宙戦争では大体、弾が光っていると思うんですけど、プラズマ化しているんですね。怪獣の吐く火とかも、プラズマ化していますね。身近なところでは、蛍光灯もプラズマです。

ただ、当研究所で扱うプラズマの温度は1億℃ぐらいで、ピンとこないかもしれないんですけど。プラズマの中の粒子、イオンとか電子がものすごいスピードで動いていて、そのスピードの尺度が温度なんですね。

ほぼ、光速に近いようなスピードで中で動いています。それが、1億℃だと思ってください。それぐらい速く動いていると、本当は重水素と三重水素をぶつけたいんですけども、それぞれイオン化しているんで、プラスとプラスで反発してぶつからないんですね。

核融合しようがないんですけども、1億℃の温度が出ると、時々速いモノ同士が正面衝突して合体しちゃう、これが核融合なんですね。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

太陽とかでは、実は1億℃の部分はないんですよ。もっと低い温度なんですけども、太陽はものすごく大きくて粒子がいっぱいいるんで、確率が多いんですね。温度は低めなんだけど、高い密度で核融合を取得しているのが太陽です。

地上で太陽のマネをして、核融合を起こそうと思っても、太陽と地球って半径が100倍違うので小さすぎて、集めておくための重力が足りないんですね。そこで重力じゃなくて、何を使ってプラズマをギュッとするかというと、磁力、磁場なんですね。

プラズマはプラスとマイナスで、電気的な力が強いモノですから、磁力線があると、くるくる巻き付いて動くような運動をします。そこを利用して、磁力線をドーナツ状にしておくと、プラズマがずっとぐるぐる回っていると。

筧:
それで、超伝導のコイルが必要になるんですね。

宮澤様:
その通りです。閉じ込める磁場が強ければ強いほどいいです。

一つ、厄介なのはドーナツ状の単純な磁力線ではなくて、磁力線をひねってやる必要があるんですね。

プラズマがくるくる回っていると、遠心力が働いて飛び出るようなイメージで構わないんですけども、遠心力で飛び出る前に、上と下をくるくるかき混ぜてやるような配置にしておくと、プラズマが上手く閉じこもるというのが、50年ぐらい前の研究でわかったんですね。

筧:
なるほど。50年も前なんですね。

宮澤様:
はい。それから、そういう形でやる方式が考え出されまして、一つはトカマク(Tokamak)方式で、プラズマのドーナツの中に電流を流してやって、電流が作る磁場を使って、ひねるための磁場を作ってやるというのが、トカマクです。

これは、初期から大成功しまして、今ではフランスにITER(イーター)という略称の非常に大きなトカマク核融合炉を作っています。たまに、ニュースになるので、ご存知かもしれませんけどね。日本、ヨーロッパがお金を出し合って作っています。

プラズマ中に電流を流すのは、小さい装置だと楽なんですけども、ITERとか、核融合炉とか大きいモノになってくると、プラズマ中に電流を流すのがすごく大変になってくるんですね。

我々がやっているヘリカルは、プラズマ中に電流を流して磁力線をひねる代わりに、周りに置いたねじったコイル、これをヘリカルコイルと言うんですけど。ヘリカルコイルで作った磁場は自然とねじれているんですよ。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

ですから、プラズマに電流を流さなくてもねじれた、閉じた磁場が出来るので、これを使えば1年でも2年でもプラズマを閉じ込めておけるというのが、ヘリカル炉の特長になります。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

ただ、作るのがすごく難しいので、トカマクに比べて大体30年遅れぐらいで開発が進んでいます。幸いなことに、トカマクも大きくして難しくなってきたせいで、ちょっと進歩が遅くなっているんですね。ITERも、ちょっと建設の遅れがあったりして、足踏みしているんですよ。ですから、彼らがウサギさんだとすると、遅れていた我々カメもようやくウサギに追い着いてきたというところで。

フラッグシップが、大型ヘリカル装置Large Helical DeviseでLHDと言っているんですけれども、1998年に運転開始して、もう23年になります。

最近は、ドイツにコイルだけで磁力線をひねる装置が作られまして、それらもすごくいい成績を出していて、やっとライバル登場というところなんですけども。この20年近くは我々の独壇場だったんですね。

小さい装置だと、スペインとかアメリカにもあったりするんですけども、大きな装置では日本とドイツが主権争いをしているような状況です。

色んな世界中の研究者、日本の大学の研究者も含めて、大型ヘリカル装置で様々な実験をして、論文を書いて頂くと。我々は基本的に、大型ヘリカル装置を運転する立場という形になっています。

営業形態と言いますと、それですかね。他にも色んな共同研究をやっているんですけども、共同研究も一手に担うような機関になります。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

筧:
ありがとうございます。

川岸:
アメリカにあるような装置だと、レーザーで核融合をやるタイプもあって、方式としては、超伝導でやるタイプと2方式あるというふうに本で読んだことがあったんですけど、レーザーはどういった経緯なんでしょうか?すみません、好奇心から来るもので。

宮澤様:
いえいえ、よくご存知で。

世の中には、トカマクとかヘリカルのような磁場を使う、磁場閉じ込めのタイプがあって、大きな重力を使って閉じ込めるのに似ているんですけども。重力じゃなくて、周りからの圧力でギューって圧縮してやるタイプが、レーザー核融合になります。周りからレーザービームを均等に当てて、1mmぐらいの小さいペレットを1,000分の1とか1万分の1とか、すごいレベルで圧縮します。

そうすると、中の密度がすごいことになって、核融合が起こると。

川岸:
なるほど。

宮澤様:
ただ、これは1発1発なんですね。1回バンってやったらなくなっちゃいますから、また次、球を落としてレーザーで撃つというのを、1秒間に10回ぐらいやることが必要です。車で言うと、エンジンの爆発みたいなものですね。何回も爆発させる必要があります。

川岸:
なるほど。間欠動作なんですね。連続ではなく、間欠的に動かして、そこで発生したエネルギーを回収するという流れなんですね。

宮澤様:
そうなんですよ。

ただ、構造がめちゃくちゃシンプルになり得るので、ただ単に真空容器を用意して、氷の粒のペレットを落として、真ん中に来た時を見計らって、周りからレーザーを撃つという。

装置としては、入れ物だけみたいな感じで、我々、磁場核融合から比べると、装置がシンプルになるんで、楽に思えるんですけども。彼らの場合は、レーザーの部分が大変なんですね。

巨大なレーザーが何本も同期して撃つ必要がありますし、均等に圧縮するというのは中々難しくて。アメリカの米国立点火施設National Ignition Facilityという装置があるんですけども、立ち上がってすぐに核融合を自己点火するんだ、みたいな事を言っていたんですけども、やってみると、よく見ると波打っちゃうんですね。

そういう不安定性を制御するのに、中々苦労していて、そこそこの成果は出ているんですけど、思ったほどの成果が出ていなくて。彼らも、言うなればウサギさんで今、足踏みしている状態ですね。

川岸:
なるほど。

宮澤様:
ですから、それを見ている人達が、チャンスだという事で、今いっぱいカメが湧いてきているんですよ。アメリカで核融合ベンチャーというのが、いっぱい立ち上がってきていて。

川岸:
そうなんですね。

宮澤様:
ええ。小さい会社なんですけども、違う方式、あるいは今までやってきたけど、あまり注目されてこなかった方式をもう1回リバイバルして。

もちろん、トカマクとかヘリカルの流れもありますけど。世界で二十何社ぐらいが民間でやるんだと言って、ベンチャーを立ち上げています。

今、意外とね、少しブームなんですよ。

川岸:
そうなんですね。

宮澤様:
はい。ITERがちょっと足踏みしている状況を見て、皆さんチャンスだと思っているのか、私もそう思っているんですけど。(笑)

川岸:
そうなんですね。(笑)

宮澤様:
追い抜くチャンスだなと思っていて。この世界でも、同じような考えの人がいて、色んな方式の核融合炉を、こっちの方がいいんじゃないかと言って提案している状況です。

川岸:
なるほど。いつかSpaceX(スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(英: Space Exploration Technologies Corp.)辺りが、月からヘリウム3を回収してきて使うみたいな事も有り得るかもしれないですね。

宮澤様:
はい、はい。(笑)。そうですね。ヘリウム3が月にあるというのは、核融合と絡めて話されますね。(笑)

川岸:
はい。ありがとうございます。

— DMM.makeの3Dプリンター 出力サービスを利用してどのようなモノを製作されましたか、詳しくご紹介して頂けますか?

宮澤様:
ここに、一番最初に作ったモノを持ってきました。

ヘリカル型核融合炉の縮尺模型を3Dプリンターで製作した活用事例

筧:
すごい。

宮澤様:
我々のグループでは、ヘリカル型の核融合炉をどんなものになるのかなというのを設計するグループが立ち上がっていまして。核融合ベンチャーじゃないですけど、我々が核融合炉を作るんだったらこういうモノだというのを、大型ヘリカル装置で得られた知見を基にして、設計しています。

その中で一番大切なのは、大型ヘリカル装置には付いていないブランケットと言われる部品なんですね。

10分の1セクションで、これが10個あるとドーナツが出来るんですけども。ここの空いたところにプラズマが付きます。この青い部分がヘリカルコイルというモノで。クネクネとしてヘリカルに回ったモノが、ドーナツになっていて、それが2つあるモノです。その中に上手く磁場が出来まして、プラズマが閉じ籠もるんですけども。

屋内, 椅子, テーブル, 木製 が含まれている画像

自動的に生成された説明

プラズマの中で起きた核融合によって、さっきヘリウム3の話が出てきましたけど、今一番燃えやすいのは重水素と三重水素、DとTの反応なんですね。これを反応させると、光速の中性子が出来ます。この中性子をブランケットで受け止めて、中性子の熱エネルギーで水を沸かしたり、我々の場合、液体金属とか、溶融塩などの温度を上げて、結果的に水を沸かしてタービンを回すのが一番なんですけども。



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